シェルター、木質耐火部材「COOL WOOD」とKES構法をオーストリア・WIEHAG社にライセンス供与

山形県山形市に本社を置く株式会社シェルター(代表取締役社長 木村仁大)は、オーストリアの木質構造メーカーWIEHAG社(ヴィーハグ、本社 オーストリア・アルトハイム、CEO Dr. Erich Wiesner)と、COOL WOODのライセンス契約を結びました。締結日は現地時間の2026年9月14日付です。今回の契約では、木造ビルを建てるうえで欠かせない2つの技術が供与の対象となります。一つは耐火技術である木質耐火部材「COOL WOOD」、もう一つは構築技術である接合金物工法「KES構法」です。

世界の大規模木造を手がけるWIEHAG社
WIEHAG社は1849年に創業し、オーストリア・アルトハイムを拠点としています。大規模・大スパンの木造建築や木造ハイブリッド建築などについて、エンジニアリングから製造、物流、施工、プロジェクトマネジメントまでを一貫して担っています。プロジェクトはオーストリア国内にとどまらず、欧州やオーストラリアなど世界各地で展開しています。木材利用によるCO₂削減や循環型建築を重視し、木造技術によって持続可能な建築への転換を進めている企業です。
同社は、アメリカ・ミルウォーキーの「アセントタワー」や、シドニーの「アトラシアン・セントラル」に参画しています。WIEHAG社のHPによると、アセントタワーは高さ86.6m、地上25階建てで、2022年の完成当時、木造ハイブリッド構造として世界一の高さのビルでした。アトラシアン・セントラルは高さ182m、地上39階建てです。2027年に建設が完了する予定で、竣工時には木造ハイブリッド構造として世界一の高さのビルとなる予定とされています。
この契約の目的は、両社の繁栄と、欧州・日本の双方で木造建築をさらに発展させることです。シェルターは技術交流と協力関係を深めながら、木造耐火ビルを海外に広めることに取り組むとしています。

「燃え代」だけでは足りない、という問題意識
環境意識の高まりを受けて、海外では木造ビルの計画や建設が相次いでいます。こうした建物の耐火設計には、日本で準耐火構造などに使われる「燃え代設計」と共通する考え方が採用されています。燃え代設計とは、火災で失われると想定される部分(燃え代)を、構造上必要な寸法にあらかじめ上乗せしておき、避難に必要な時間を確保する設計法です。木材は火災時に表面から炭化が進みますが、内部に残った断面は一定時間、強度を保ちます。この性質を利用して、所定の時間、建物を支える構造耐力を確保します。なお、木材が燃え進む速さは樹種によって異なりますが、1分間に約0.6mm〜1mm程度とされています。
建物全体の火災安全性は、こうした構造面の対策に、スプリンクラーなどの消火設備や避難計画を組み合わせて確保されます。ただし、燃え代を確保するだけでは、火災が終わった後に燃え止まることまでは保証されません。シェルターは、在館者が避難するための時間を確保するだけでなく、火災が終わった後まで構造体を守り、生命と財産を守ることが重要だと考えています。
同社が世界に広めようとしているのは、「燃え止まり、自己消火し、通常の火災による倒壊を防ぐ」という日本の木造耐火技術です。所定の耐火試験で、加熱終了後に燃え止まることを確認した技術を供与し、その概念を広めていきます。あわせて各国の基準への適合を進め、生命と財産を守る木造耐火ビルの建設を世界各国へ広げていく方針です。同社はこれまでに、2023年12月にウォルトガルマリーニ社(スイス)、2024年4月にMKA社(アメリカ)、2025年6月にヘリング社(スイス)と契約しています。さらに2026年には、オベルト・オベルティ・アーキテクト・アンド・アーバンデザイン社、カナーングループ社、ジェイキン・エンジニアリング・アンド・コンストラクション社の3社(いずれもカナダ)と、リップマン社(オーストラリア)とも契約を結んでいます。
供与される2つの技術
木質耐火部材「COOL WOOD(クールウッド)」
COOL WOODは、燃え止まり層に石こうボードを使った耐火部材です。1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間の国土交通大臣認定を取得しており、このうち2時間と3時間は日本初の取得です。特許は日本、カナダ、スイスで取得しています。中心部の「荷重支持部」にはスギ以上の比重がある樹種を選ぶことができ、製材、集成材、LVL、CLTなどが使えます。1時間耐火仕様と2時間耐火仕様の柱については、EPD Hubで認証を受け、EPD(環境製品宣言)を取得しています。技術は一般社団法人日本木造耐火建築協会を通じてオープン化されています。2020年度には文部科学大臣表彰 科学技術賞 技術部門を受賞しました。
接合金物工法「KES(ケス)構法」
KES構法は、木造建築における日本初の接合金物工法で、日本、アメリカ、カナダで特許を取得しています。オリジナルの金物で柱や梁の接合部を緊結することで、木造建築の耐震性能と耐久性能を飛躍的に高めました。建方に特殊な技術を必要とせず、施工性が高いことも特徴です。2010年度に文部科学大臣表彰 科学技術賞 技術部門を受賞しています。
「木造都市」を日本から世界へ
シェルターは、日本の高い耐火基準を世界のデファクトスタンダードにすることを目標に掲げています。そのうえで、人と地球環境に優しい未来の都市の姿として「木造都市」を構想し、木の文化を持つ日本から世界に発信していくとしています。代表取締役会長の木村氏は、世界では木造ハイブリッドビルが急速に建設されている一方で、特に火災対策ではより安全な方法が模索されていると述べています。そのうえで、世界的な木造建築企業のトップ層に同社の耐火技術を理解してもらえたことが、今回を含むこれまでの契約につながっていると感じているとコメントしました。また、ユーロコード(欧州構造基準)の委員会の専門家が同社の耐火技術の安全性を高く評価していることにも触れ、今後も「燃え止まり、自己消火し、通常の火災による倒壊を防ぐ」木造ビルの実現に貢献していくとしています。
シェルターは1974年12月の設立です。事業として、KES構法、COOL WOOD、曲線・ひねり部材FREE WOODといった木質構造部材の研究・設計・製造・販売を行っています。このほか、大規模・中高層・耐火の木造建築の設計・施工・改修工事、木造防耐火設計とコンサルティング、三次元加工による木製大型家具・内外装材の製作、木造都市づくりの企画・コーディネートなども手がけています。
出典:株式会社シェルター








