東京が4年連続で世界最高水準に。AIで大規模化するデータセンター建設、コストを押し上げる人材と電力の壁

英国ウェスト・ヨークシャー州に本社を置くグローバル・プログラム・マネジメント企業のターナー&タウンゼント(Turner & Townsend)が、最新の「データセンター建設コスト指数(DCCI)」をまとめました。2026年も、世界のデータセンター建設コストは上昇を続けました。AIの計算能力への需要と大規模データセンタープロジェクトが急増する一方で、電力を確保した用地や、プロジェクトを担う熟練労働者の供給が追いつかなかったことが背景にあるとしています。
今回で第10版となるこのレポートは、62市場で進行中または最近完工した500件超のプロジェクトのデータを使っています。あわせて、世界のデータセンター業界に携わる400名超の専門家への調査結果も用いて、多角的に分析・検証しています。指数は標準的な60MWの設計を前提に、1ワットあたりの参考コストと指数スコアを示したものです。アジア太平洋の市場については、現地通貨建てのコストと、米ドル換算に使った為替レートも併記しています。
東京が4年連続の首位、大阪が2位に
1ワットあたりの建設コストは、東京が18.28米ドルで4年連続のトップでした。続く2位は大阪の17.15米ドルです。同社はこの結果を、日本がアジア地域および世界のデジタル大国であることを裏付けるものと位置づけています。また、日本が急速に順位を上げてきたことや、国内のAI企業をはじめとするテクノロジー企業からのデータセンター需要が強いことが、ここ数年の指数の上昇に表れているとしています。アジアのほかの市場では、シンガポール(15.39米ドル)が上位5位に入りました。香港(12.97米ドル)は14位、ジャカルタ(11.96米ドル)は26位です。
欧米の高コスト市場と、低コストの新興市場
アジア以外では、チューリッヒ(15.93米ドル)、シリコンバレー(15.01米ドル)、コペンハーゲン(14.41米ドル)のコストが最も高くなりました。首位は日本ですが、上位の約半数は欧州17市場と北米13市場が占めています。同社は、これらの地域が引き続き業界で優位にあることがうかがえるとしています。なお、世界のデータセンターのおよそ半数は北米に、4分の1は欧州にあります。
コストが最も低かったのは次の5市場です。こうした新興のデータセンター市場では、より安価な労働力をより容易に確保できるとされています。
- 上海:5.79米ドル
- ムンバイ:6.83米ドル
- ホーチミン市:8.32米ドル
- ボゴタ:9.13米ドル
- UAE:9.20米ドル
圧力はやや緩和、それでもコストは構造的に高止まり
世界全体で見ると、2026年のコスト圧力はやや落ち着きました。ただし、構造的に高い建設コストとリスクが契約内容に織り込まれる傾向は強まっています。深刻化する人材不足も労務費を押し上げています。コスト上昇の大きな要因は、特にAI向け施設を中心とした建設規模の拡大です。こうした施設では、逼迫するキャパシティを乗り越えて工期を短縮するため、代替の事業遂行手法や技術専門家、リスクバランスに配慮した新たなモデルが求められているといいます。専門家調査の主な結果は次のとおりです。
- 回答者の52%が、2026年に6%を超えるコスト上昇を経験した。約20%は、15%を超える上昇があったと回答した
- 2027年のコスト上昇率は、28%が1〜5%にとどまると予想しており、コスト圧力の緩和が続くことを示唆している。また、57%は15%未満になると予想した
- 回答者の52%が、2027年のプロジェクトの過半(50%超)はAIワークロードを支えるデータセンターになると見込んでいる
熟練労働者と電力がボトルネックに
人材の確保も大きな課題です。回答者の81%が、地元の熟練労働者が「やや」または「非常に」逼迫していると答えました。現時点で請負業者のキャパシティが対応可能な範囲にあると考えている回答者は、わずか52%でした。電力についても、56%がプロジェクト成功の主要な障害に挙げています。電力系統への接続に通常1〜2年かかるという回答が半数超(52%)を占め、2年超という回答も3分の1近く(32%)に上りました。
同社のデータセンター建設コスト指数責任者であるポール・バリー(Paul Barry)氏は、指数を初めて発表してからの10年間で業界が一変したと振り返ります。同氏によると、データセンターへの資本支出は現在年間8,000億米ドルに達しており、2050年までに1.8兆米ドルに達する見通しです(出典:PWC「グローバルAIインフラ・レポート」)。一方で、資材費や労務費の上昇は世界各地で引き続き課題となっており、電力や専門設備、人材の確保がボトルネックであり続けているといいます。さらに、ギガワット級の電力に対するAI主導の需要や、ラック密度の増大に対応する液冷の導入がデータセンターの大規模化を後押ししています。ただ、熟練労働者の不足と大規模で複雑なプロジェクトの遂行に伴うリスクの増大が、コストの上乗せ要因になっていると指摘しました。データセンターへの監視の目も厳しくなっており、プロジェクトの遂行には政治的・地域社会の同意が欠かせないとも述べています。
アジア不動産部門のマネージングディレクター兼責任者であるスミット・ムカジー(Sumit Mukherjee)氏は、グローバルなデータセンター市場において、アジアはもはや追随者ではなくペースを決める存在だと語ります。運用経験が豊富で確立されたハイパースケール需要を持つ市場もあれば、用地や労働力、地場のサプライチェーンを確保しやすいことを強みに急成長している市場もあるといいます。そのうえで、所在地を問わず電力、用地、熟練人材への需要は高いと指摘しました。アジアで優れた成果を上げているチームは、早期に計画を立てて基本要件を事前に確保し、ごく初期の段階から厳格なコスト管理とリスク管理を取り入れているとしています。








