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建築家・松岡恭子氏が語る「都市の余白」とAI時代のまちづくり。ワンビルの公共空間から地方の空き家まで

建築家・松岡恭子氏が語る「都市の余白」とAI時代のまちづくり。ワンビルの公共空間から地方の空き家まで

福岡を拠点に不動産の賃貸・売買仲介、賃貸管理、ビル管理などを手がける株式会社大央の代表取締役で、建築家の松岡恭子氏が講演しました。会は、2026年10月8日(木)にONE FUKUOKA HOTEL 6階 ザ ボールルーム(福岡市中央区天神)で開かれた「福岡県中小企業経営者協会連合会 合同例会」です。福岡中経協・北九州中経協・筑後中経協・筑豊中経協による見学会・講演会・交流会として行われました。講演テーマは「まち・建築・未来 ~人口減少時代の魅力的なまちとは~」。天神地区の再開発を入り口に、人類と建築の歴史、人口減少社会の課題、AIの活用まで、話題は多岐にわたりました。直接的な収益だけでは測れない公共空間の価値や、AIが提示する選択肢を人間がどう判断するのかという視点が示されています。

建築家・松岡恭子氏が語る「都市の余白」とAI時代のまちづくり。ワンビルの公共空間から地方の空き家まで

天神ビッグバンが求めた「公共に資する機能」

天神では、航空法による高さ制限や容積率などの制約があり、老朽化した建物の更新がなかなか進みませんでした。天神ビッグバンは建築上の規制を緩和する一方で、歩行者空間や広場の整備といった公共に資する機能を求めています。その考え方は、ワンビルの随所にも見られるといいます。

松岡氏が特に注目したのは、1階と6階です。収益性の高い1階には、買い物をしなくても通り抜けたり、腰を下ろしたりできる空間が広く確保されています。エレベーターの乗り換えフロアである6階には室内広場があり、仕事をする人や待ち合わせをする人など、さまざまな世代が自然に交わっています。

講演では、かつての福岡ビルの記憶にも触れられました。福岡ビルは、用がなくても立ち寄れ、雨宿りもできる場所でした。店と通路の境が曖昧で、誰もが街の一部として使えたといいます。新しいビルの公共空間を語りながら、松岡氏はそうした天神の記憶も丁寧に呼び起こしました。

建築家・松岡恭子氏が語る「都市の余白」とAI時代のまちづくり。ワンビルの公共空間から地方の空き家まで

「変数が多い時代」に、AIと人間が担う役割

住宅や公共施設が一定程度整ったいま、社会が直面しているのは、空き家、施設の老朽化、人口減少に伴うインフラ維持の負担です。その一方で、人々の価値観や暮らし方は多様化し、一律の正解を見つけにくくなっています。とはいえ、一人ひとりの希望を満たすことが、必ずしも社会全体の最適解になるとは限りません。道路や水道をどこまで維持するのか。現在必要な設備が30年後にも必要なのか。温暖化による環境変化に対して、どこまでシミュレーションできるのか。松岡氏は、こうした現代社会を「変数が多い時代」と表現しました。

例に挙げられたのは、松岡氏自身が設計に携わった北九州空港連絡橋です。この橋は100年間の利用が設定されており、構造、材料、建設費、維持管理など、検討すべき条件は膨大でした。当時も複数の案を比較しましたが、時間や情報処理能力には限界がありました。今であればAIを使って、従来は検討しきれなかった選択肢を生み出し、さまざまな条件で比較できます。どれだけ「変数の多い」複雑な条件設定でも検討を進められるようになり、複雑な社会課題を考えるうえで大きな可能性をもたらすといいます。

ただし、100案、1000案をつくること自体に意味があるわけではない、と松岡氏は続けます。何を大切にするのか、誰のために何を残すのか。その判断には人間の価値観と、未来の世代への愛情が必要だと語りました。AIが選択肢を増やしても、選択の責任まで手放してよいわけではない、という指摘です。

空き家・空き店舗を「余白」として捉え直す

質疑応答では、久留米など地方都市の活性化について質問が寄せられました。松岡氏は、即効性のある解決策はないとしたうえで、「余白」という視点を示しました。戦後の建築は機能、量、スピードを優先したため、自由に使える余裕に乏しい空間も多くありました。いま各地に生まれている空き家や空き店舗は、衰退の象徴であると同時に、新しい活動を受け入れる場所にもなり得るといいます。

ワンビルの広場は、直接的な収益を生んでいないかもしれません。しかし、交流や休息、街へ足を運ぶ理由という別の価値を生み出しています。地方の余白についても、松岡氏は「先人が残してくれた財産」として捉え直すことを提案しました。

講演全体に共通していた姿勢

講演では、ワンビルの公共空間、建築の歴史、AIによる検討の高度化、地方都市の「余白」が取り上げられました。いずれのテーマにも、建築や都市の価値を収益性や機能性だけで判断せず、人々の暮らしや将来世代への影響まで含めて考える姿勢が共通しています。株式会社大央は、講演で示された公共空間の価値や地域資源の活用といった視点を、地域と不動産のこれからを考えるうえで重要な論点として受け止めています。同社は今後も、地域の暮らしやまちの魅力につながる情報を発信していくとしています。

出典:株式会社大央

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