「廃棄物」のない建築・土木へ。日建設計のCDCに「CDC協創会議」が発足、ロフトワークが運営事務局に

株式会社日建設計が発案・推進する、建築・土木領域のサーキュラーデザインプラットフォーム「Circular Design Collective(CDC)」に、新しい推進体「CDC協創会議」が立ち上がりました。業界全体でサーキュラーエコノミーの取り組みを本格化させるため、多様なステークホルダーが参加する場として設けられたものです。運営事務局は株式会社ロフトワークが担当します。
協創会議の土台となるのは、日建設計がファウンダーとして策定した全体理念とビジョンです。CDCがこれまで積み重ねてきた思想や知見をもとに、業界の垣根を越えたネットワークづくりを進めます。そのうえで、循環型建築の社会実装に向けた取り組みを、協創によって加速させることを目指しています。ロフトワークは、全体の企画、議論の編集と情報発信、運営管理を担います。

つくって壊す一方向の流れを見直す
循環型社会への移行をめぐっては、世界的な規制強化、産官学のパートナーシップ発足、企業のビジネス市場への参入など、国内外でサーキュラーエコノミー推進の機運が高まっています。一方で、議論や情報発信が増えても、社会・経済全体の循環性は十分に改善されていないという指摘もあります。建設領域は、資源消費や廃棄物、温室効果ガス排出の観点から、移行において重要な領域とされています。求められているのは、建物を新しくつくり、使い、壊し、廃棄するという一方向の流れを見直し、既存の部材や空間を資源として捉え直すことです。設計段階から解体後の再利用を見据えること、廃棄物とされてきたものに新たな価値を見出すことも求められています。こうした考え方を実務の中でどう成立させるかが、いま問われています。
こうした課題意識から、日建設計は2024年にCDCを発足させました。CDCは、循環型建築を実装するためのデザイン手法「Circular Design」に関する知見を研究し、集合知として蓄積する活動です。建築・土木業界から「廃棄物」という概念をなくすことをミッションに掲げ、次の3つの考え方を軸に探究を続けてきました。
- Vernacular(すべての部材は地球に還る)
- Design for Disassembly(設計時から解体後の循環を考える)
- Upcycling(廃棄物に命を吹き込む)
最初の取り組みとして開発されたのが「Circular Idea Catalog(CIC)」です。循環型建築に関するアイデアや事例、社外の専門家情報などを集約したもので、ロフトワークが開発を伴走支援しました。サーキュラー建材や実践事例を実務で参照しやすい情報に整理するため、検索軸と評価基準の設計、定量・定性の両面からの言語化、プロトタイプ開発が行われています。
2025年度は、CICをベースに企業の垣根を越えて知見を共有する仕組みを目指し、日建設計以外の企業7社の有志が加わりました。参加したのは、ゼネコン、設計事務所、空間デザイン・内装関連企業などです。定例会議は12月・1月を除いて毎月開かれ、計10回を実施しました。各社が国内外の事例を収集し、実務者の視点から分析・評価した事例は100件以上にのぼります。2025年7月には、岐阜県飛騨市の「飛騨の森でクマは踊る(ヒダクマ)」による視察ツアーを実施しました。広葉樹の森、集材所、製材所、木工家具工房、そして広葉樹の活用と循環を実装した建築「森の端オフィス」を巡り、国産木材が循環する一連の流れを共通体験として学んでいます。

2026年度に予定されている主な活動
協創会議は、CDCが培ってきた知見を業界全体で共有し、実践へつなげる次の段階と位置づけられています。2026年度は、より多様な実務者や企業が参加しやすい仕組みへと活動を再構成します。実務者が個人単位で加わる「協創パートナー」制度と、企業単位でCDCの活動成果にアクセスできる「協創企業パートナー」制度を整えました。活動期間は2026年5月〜2027年3月の予定です。開催形式は原則対面で、一部オンラインにも対応します。主な開催地は東京、大阪、京都ほかです。
月次の定例会と、知見を編む「CIC」
定例会では、協創パートナーがサーキュラーデザインにかかわる事例や論点を持ち寄って議論します。原則として対面で開かれ、東京・大阪・京都などを拠点に、各社の現場や関連施設の視察も組み合わせて行います。議論は事例紹介だけにとどまりません。循環型への移行を促すためにどんな構造的課題に向き合うべきか、事例からどんな実践の手がかりが得られるか、実現には誰とどのようなコミュニケーションが必要か、といった視点から掘り下げます。年度内には合同視察・合宿も予定されています。
CICは、協創会議で扱った事例や議論のインサイトを、参加者限定の事例集や編集記事として蓄積するアーカイブです。事例や議事録をそのまま保存するのではなく、実務者が次のプロジェクトで参照できる知見に編集したうえで、CDC内で共有します。
個人と企業、ふたつの参加ルート
協創パートナー制度は、サーキュラーデザインに関心を持ち、実践を志す有志の個人が対象です。参加には、既存の協創パートナーからの推薦・招待と、CDC憲章・規約への同意が必要です。参加者には、議論や言語化への主体的な参加、事例やアイデアの提供、CDC全体の共有知の蓄積への貢献が求められます。協創企業パートナー制度は、法人単位でCDCの活動成果にアクセスできる制度です。CICや年次報告書などを通じて、各社のサーキュラーデザイン推進や実案件での活用を支援し、定例会へのオブザーバー参加も可能です。協創パートナー/協創企業パートナーへの参加を検討している場合は、ロフトワークのCDC協創会議運営事務局へ問い合わせると、参加方法や条件について個別に案内を受けられます。

「協創からの競創へ」
CDC協創会議が目指すのは、知見を囲い込むことではありません。協創によって共有知を育て、各社がそれを実案件で活用しながら、よりよい実践を競い合っていくことです。活動指針であるCDC憲章では、この考え方を「協創からの競創へ」と表しています。蓄積したアイデアやプロセスを業界全体の基盤として共有し、各メンバーが実際のプロジェクトで生かすことで、日本ならではの資源循環型社会の実現を目指します。
日建設計は、目指す循環型建築を、資源の再利用にとどまらず、地域の人々に長く愛され、次世代へ受け継がれる建築だと説明しています。ロフトワークを運営事務局に迎えて協創の輪をさらにひらき、業界の「あたりまえ」を底上げしたうえで、各社の強みを生かす「競創」へ進む考えです。ロフトワークは、循環型建築を社会に根付かせるには、技術や素材の知見に加えて、自然資本や地域の文化、営みと経済合理性をつなぐ視点が欠かせないとしています。業種や専門領域を越えて多様な問いを具体的な試行へとつなぎ、過程と成果をひらくことで、実践が生まれる場を育てていくとしています。
出典:ロフトワーク








